夜、自宅でご飯を食べていた。
テレビでは、下着どろぼうの逮捕の瞬間をとらえたドキュメンタリーが流れている。
警察「〇〇さんだね?」
泥棒「はい」
警察「逮捕状。なんでかわかる?」
泥棒「あ、はい。」
実に素直だ。
下着を盗むとは思えないほど、駆け引きのない回答。
その潔さに少し感心している一方、
下着泥棒の気持ちが、わからない。
エロリーマンといわれる覚えはあるが、
人生を掛けて他人の下着を集めようなどという気持ちはとても持ち合わせていない。
何千もの下着を集めている姿を見ると、
そこにファンタジーを感じることができない自分の想像力の方が
著しく欠如しているのではないかと少し不安を感じていたとき、
エリカ
「むこどのって、パンツに興味ないの?」
わたし
「興味ないなぁ。」
エリカ
「そうなの???なんで???」
なぜか、重圧を感じる。
なんでと言われても、
女性には興味津々だが、
パンツ それ自体にはそんなに興味はなかった。
まだ私が思春期のころであれば、
もう少しパンツに反応していたかもしれない。
週刊少年ジャンプの伝説の漫画、いちご100%では冒頭からヒロインのいちごパンツが描かれているが、それもヒロインあっての興奮スポットであり、そこにパンツ単体が描かれていても特に本能的な反応は生まれなかっただろう。
パンツに興奮するということは、
そのパンツに付随するストーリーを創造し、
甘美な世界を脳内に繰り広げ、
限りある情報から無限の夢を引きだして妄想を爆発させているはず。
やはり、パンツに興奮するのには
それなりのアビリティが必要かもしれない。
もともと、焼肉の匂いで「この匂いでご飯3杯はいける」という例えにはあまり共感できないタイプだった。
匂いだけで、ご飯は食えない。
やはり、焼き肉を食べて初めて焼き肉の旨さを感じ、ご飯を10倍も100倍も美味しく食べることができる。
そこでエリカが聞いてきた。
「佐々木希のパンツは?」
良い質問だ。
そう、佐々木希は可愛い。
私が唯一写真集を買った美女であり、
エリカも私が佐々木希が好きなことは既知であり、
全てのプロセスをすっ飛ばして
「本当にパンツに興味がないのか?」という核心を突く、極限の質問を投げかけてきた。
実に合理的で効率の良い問いを立てられた。
しかし、私の答えはNoだった。
エリカ
「そうなの?ちょっとおかしいんじゃない?」
なぜ、突然そこまで言われないといけないのかはよくわからなかったが、
そう言われ、少し自分を見つめ直した。
たしかに、誰のものかわからないパンツと比較した時、
「佐々木希のパンツ」と言われると、
そこに付加価値があることは間違いがない。
誰がどう見てもそんじょそこらのパンツとは一線を画しており、
「佐々木希が身につけていた」ともなると、一段と臨場感と具体性が増し、そこに更なる付加価値を感じる人が居るだろうし
オークションが開始すれば価格は青天井で暴騰していくだろう。
しかし、
それでも、
やはりパンツはパンツ。
佐々木希のパンツであっても、
喉から手が出るほど欲しいとは思わなかった。
裏を返せば、
パンツにアメリカンドリームを見ている属性の人間がこの世には存在している。
ということは、
どこぞのオッサンがはいたパンツに
あられもない女子大生のキラキラオレンジデイズのふわふわストーリーを記していけば、ただのパンツにもとんでもない付加価値が生まれるのではないか。
そんなことを話していた、
平日の夜であった。